境界型自閉症と車の免許
我が家の長男長女はそれぞれ障害者手帳を持っている。
当然度数は違うが、境界型の長女も4度とは言えちゃんと障害者と認定されている。
この知的境界型の子供たちの苦労を高校時代にまざまざと見せられた。
受験を経て都立の特別支援学校に入りました。
でもギリギリだから手帳あげられません、と東京都に突っぱねられてしまったら彼らに行き場はない。
何故ならば特別支援学校を出ても高校卒業の資格はなく
企業が欲しいのは障害者として認められた人間なのだから。
精神手帳を取ったり、障害者枠を埋めたい企業と関係ない所へ行くしか無いのだ。
知能検査でギリギリだった長女が何故手帳を貰えたのかと言うと、決定打は言語障害だった。
ある程度普通の人と遜色ない感覚を持ちながら
彼女には検査する方の言葉に的確に反応したり、書類に書かれている文章を理解する事ができなかった。
しかし自閉症ならではの能力のガタツキは彼女の場合数字や機械に偏っていた。
高校時代にパソコンの資格を取らせ、フォークリフトの扱いも学んだ。
そんな長女を企業が欲しがったのも無理はない。
裏方仕事なら抜群の能力を示すのだ。
大企業の特別子会社という狭き門から、ご指名が来ての最高の就職だった。
私は母としての最後のプレゼントに、と自動車の普通免許を取らせるために就職が決まってすぐ長女を教習所に入れた。
手帳4度の人なら免許を取りに来る人はけっこう居るんですよ、と教習所の人は教えてくれた。
車の運転ぐらい長女にはなんて事なかった。
私が運転してるのを見て操作は記憶していた。
実技は1つも落とす事はなかった。
しかしとうとう車の免許を取れる日は来なかった。
何故ならば、学科の問題の文章が理解できないのだ。
引っ掛け、ひねり、類似問題。
たった1つの正解を導き出す事。
彼女には数字でならそれができても、文章ではできなかったのだ。
悔しかった。
これが限界なのか、とあの時思い知った。
時間をかければあるいは可能なのかもしれない。
だが就職してから気の遠くなるような時間を取ることは難しく
本人も無理だ、と
免許取得を諦めたのだ。
もしもこの先チャレンジしてみよう、あるいはさせてあげようと思う方がいたらこれだけは事前に覚悟しておいて損は無い。
焦らず、時間をかけて取り組める環境を与えてあげる事が不可欠なのです。
車を運転する能力があっても、問題の文章が理解できない不条理を思った。
退会手続きをしながらドブに捨てたような10数万を支払った。
またいつかチャレンジしてみると言ったら、私は全力で応援する気でいる。
しかし勿体ないね。
機械を扱う能力なら並外れて持ってるのに。
この世の中はマルチな人間のためにできている。
上の合成写真は長女が作ってくれた。
彼女は携帯1つ持っていれば世界を無限に広げていく。
言語に偏っていた私とは違う世界に生きている。