人はバカではないと教える難しさ
たまにこんな人が身の周りに居たりしないだろうか。
きっと頭はすごく良い。
彼一人で仕事をする分には類稀な頭脳で何でもこなす。
でも自分ができる事が他の人にできない事が理解できない。
人ができない事が理解できないから、理解させてあげる忍耐強さや優しさを持てない。
結果として自分はできるのにみんながダメだから結果が出ないと
周囲に責任転嫁して自分は悪くない
周りがバカだから悪いんだ、と
一人山の上からみんなを見下ろしていて
どんなに頭が良くても誰にも信頼されない孤独な人。
頭が良いと言うのがとても素晴らしい事だと、一般的には思うかもしれない。
確かに自閉症であってもIQが高ければ色々な事を補って上手く生きていく事ができる。
だが以前も書いた通り、人間のスペックなんてそう大きく違いはないので
何かできれば何かができないものだ。
極端に高いIQを伸ばすことだけを目指して天才を育てようとすれば
結局社会性や人とのコミュニケーションが上手くとれない変わり者が育つ。
その秀でた能力が良い方向にベクトルを向ければ良いのだけど
想像力の欠如から犯罪を犯すようになりかねない。
私は次女がIQの高い発達障害であると分かった時彼女の赤ん坊の時からの奇異な行動が全て了解できた。
まだ小学校に上がったばかりの頃、娘がこんなことを言いました。
「ねえ、ママ。あの子はうそつきなんだよ。」
と、お友達の事を言います。
そういう事が度重なるので、逐一何故そう思うのか聞くようにした。
すると
「今日こんな事言ってたの。でも前はそうじゃなかったのに。」
彼女の言っている「前」と言うのは
お友達が保育園児でまだ言葉を話し始めたばかりの頃の記憶であります。
言った当人はおそらく小学生になった今そんな昔の事は忘れているのだろう、と言うようなこと。
はは~ん、と思い当たることがあった。
次女が以前まだ小さい頃
「こんにゃくはお腹を掃除してくれるんだよね。」
と突然口走った事がある。
まだ小さい我が子にこんにゃくを食べさせたことなどなく、当然保育園の給食にも出てはこない。
したがって彼女がこんにゃくに触れる機会などなかった小さな頃の事だ。
なんでそんな話を知っているのか、と聞くと幼い娘はまだ上手く答えられない。
しかし、その横で長女が真っ青になっていた。
「ママ、その話目の前でしたことがあるよ。」
まだ赤ん坊だった次女を抱えて親族と手作りこんにゃくを出してくれる店で食事会をしたことがあった。
その時に、こんにゃくの苦手だった長女にそんな話をしたことがあったのだ。
その時私は彼女を腕に抱いていた。
それを次女が記憶していたのだとすれば
実に彼女が生後6か月当時の事であります。
自閉症講座でこんなことを言っていた。
「彼らの記憶は引き出し状になっていて、必要な情報をそこから取り出して経験値から色々判断する。経験値の無い事はとても苦手ですが、その引き出しの中身はいつまでも鮮明です。」
インプットが得意でアウトプットは苦手。
「だからできる限り一つでも嫌な経験をさせない努力をしてください。何年たっても、何十年たってもそのことを忘れられないのですから。」
こういう自分と似て非なるスケールに、母としてどう対応するか迷い悩んだ末
私は彼女を凡人に育てる事に決めた。
天才でなくていい。
その代わり学ぶのは
この世の人の当たり前のすべて。
あなたが覚えていてもみんなは忘れていく。
あなたに理解できてもみんなにはできないかもしれない。
それでも人はバカではない。
人を見下ろして孤独に生きていくのではなく
人の目線で一緒に考えられる大人に育って欲しいと願い
人の世の理を一から百まで話して聞かせてきた。
これからも話していくつもりでいる。
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