トランスジェンダーの心
役者の父親と絵描きの母親
性別は男女でしたが、中身はまるで逆。
朝ご飯を作ってくれたのも、繕い物も父がやってくれた記憶しかなく
編み物も化粧の仕方も父に習った。
自分はどうなのかと言ったら、やっぱり全面的に女の精神はもっていない。
20歳の時に受けた検査で、残念ながら子供を産むのは無理かもしれない、と医師に宣告されたときも
やった~、て思ってたぐらいで
自分が母親になるなんてこれっぽっちも考えてなかった。
今も女性の中に居ると息苦しくなる。
とても気を遣う。
自分とは性別の違う人たちと一緒にいるような気がするのだ。
一方男性陣とバイクで走り倒している時はどうか、て言ったら
ものすご~く自然体の自分が居る。
その時間、て言うのは男だったり女だったりではなく、ただのバイク乗りでいられるからいいのかもしれないのだけど
女性ライダーと楽しく一緒に走れたためしはない。
私はトランスジェンダーの人が好きだったりする。
彼らは私とちがってどっちつかずではない。
男なり女なりになりたい、てはっきりした気持ちがあって
どのような形であってもそれを実践する所までいっている人を私は尊敬する。
そんな人とおしゃべりをしてみたくて
片道120キロを走って会いに行ってみました。
「私は別に隠してないしブログにも載せてるから気にしないでね。」
手が荒れると言うのでハンドクリームをプレゼントしたらとっても喜んでくれた。
「以前は普通のサラリーマンだったのよw」
性転換手術をする、と言ったら周囲の人たちが驚いたのは当然なのだが
「お前みたいな男らしいやつが」
と言うことで余計ビックリされたようだ。
「殊更に男らしく振舞っていたのかもしれない。」
彼女は自身で興した会社をたたみ、手術を受け、今は女性として食堂を営んでいる。
彼女のバイクは1200cc
女性が乗るにはあまりにもデカい。
「乗っちゃったら重さは感じないのよ。」
彼女が女性でありたいと願った心と
バイク乗りとしては男前の部分のミスマッチがなんとも言えず素敵です。
いつから女になりたかったんですか?
「もう子供の頃から。女になりたい、て言うか男の体が嫌でたまらなかったの。」
彼女は言う。
「もう60歳ぐらいで定年してから手術する人もいるのよ。その年になって、て思うでしょ?でもみんな男の体のまま死にたくないのよ。」
不思議な光景だった。
小さな食堂の女将さんがBMWの1200ccに跨って艶然と微笑んでいる。
最後のその一線を超える決断、てどう決めたんですか。
「だって今しかできないじゃない」
食堂の経営は中々大変そうですが
彼女は今自分の本来あるべき心と体が一致した世界で幸せそうだった。
今の自分の年齢を
もうこんな歳だからと考えるのか
今しかできない、今だからできる
と、考えるのか
二通りあるならば
私はいつも後者でありたいと思う。